・なぜ景気後退期にはヘルスケア銘柄が選好されるの?
・ヘルスケア銘柄にはどんな銘柄があるの?
・注目の銘柄が知りたい
そんな方に向けて書きました。
本記事では以下の内容を詳しく説明します。
- ヘルスケアセクターとは?
- 景気後退期の「ヘルスケアセクター」のパフォーマンス
- 景気後退期に「ヘルスケアセクター」が選好される理由
- 「医薬品・バイテクノロジー銘柄」に注目
- 低分子医薬品 と バイオ医薬品 とは?
- 医薬品・バイオテクノロジー銘柄一覧(40銘柄)
- ヘルスケアセクターETF「VHT」
- バイオテクノロジーETF「XBI」「IBB」
- 株価が高値圏の銘柄
- 高配当銘柄
- バフェット銘柄
- じっちゃま言及銘柄
- 「サル痘」で急騰中の銘柄
- まとめ
私自身が知識が浅い状態から調べたことをベースに、そもそもヘルスケアセクターとは?、医薬品・バイオテクノロジー銘柄とは?という基本的な部分から「誰にでもわかりやすいように」を心がけて書きました。
ぜひ最後までご覧ください。
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(投資は全て自己責任です。ご自身の判断と責任でお願いします。)
ヘルスケアセクターとは?
「セクター」とは株式市場の分析を行う際に、業種などで区分するグループのことです。
- 情報技術
- ヘルスケア
- 金融
- 一般消費財
- 通信サービス
- 資本財
- 生活消費財
- エネルギー
- 公益
- 不動産
- 素材
ヘルスケアセクターの中には、「医薬品・バイオテクノロジー」、「ヘルスケア機器・サービス」、等の企業が含まれています。主要企業の例は以下の通りです。
✅ 医薬品・バイオテクノロジー
ファイザー(PFE)、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)、アッヴィ(ABBV)、イーライリリー(LLY)など。
✅ ヘルスケア機器・サービス
保険サービスのユナイテッドヘルス(UNH)、医療機器のアボットラボラトリーズ(ABT)、科学機器のサーモフィッシャー(TMO)など。
景気後退期の「ヘルスケアセクター」のパフォーマンス
景気後退期の米国の「ヘルスケアセクター」のパフォーマンスについては、東海東京調査センターの資料が分かりやすいので、抜粋して引用します。
1つ目は景気後退期における株価指数の推移、2つ目はEPSの推移のグラフです。
まず1つ目の株価指数の推移のデータから言えることは2つあります。
① 過去の景気後退期の序盤はヘルスケア銘柄も急落していること。
② 過去の景気後退期において、ヘルスケアセクターはS&P500指数をアウトパーフォームしていること、です。
2つ目のEPSの推移のデータは、過去の米国のCPIの推移と併せて確認したいと思います。
このデータから、過去の景気後退期において、インフレ率(CPI)が高い1990年・2007-2010年は、ヘルスケアセクターの中でも医薬品・バイオテクノロジー銘柄の業績(EPS)が他を上回っていた、ということが分かります。
ちなみに直近の「ヘルスケアセクター」のパフォーマンスはどうかというと、
年初来で見ると、「S&P500」「医薬品・バイオテック」「ヘルスケア機器・サービス」とも下落しているものの、
「医薬品・バイオテクノロジー」が最もパフォーマンスが良い、というのが現状です。
景気後退期に「ヘルスケアセクター」が選好される理由
では、なぜ景気後退期に「ヘルスケアセクター」が選好されるのでしょうか?
一般的に景気後退期に入ると物が売れなくなり、多く企業で業績が悪化します。
しかし、景気後退期でも「健康」に関わる医療費などは削減されにくく、医薬品やヘルスケア製品・サービスは安定して消費される傾向があります。
つまり景気後退期においても安定した業績が期待できることが、「ヘルスケアセクター」が選好される理由です。
そして今は、景気後退リスクが高まりつつ、インフレも高止まりしている状況です。
ヘルスケアセクターの中でも、景気後退期に強いディフェンシブな性質を持ち、インフレの悪影響も受けにくい銘柄「医薬品・バイオテクノロジー」が挙げられると思います。
そういった観点から、ここからは「医薬品・バイオテクノロジー」について解説します。
「医薬品・バイオテクノロジー銘柄」に注目
「医薬品・バイオテクノロジー」銘柄と言っても、ピンと来ない方のために、
一般的な「医薬品」とバイオテクノロジーを応用して作る「バイオ医薬品」の違いなど、基本的な内容を説明します。
ここを読んでいただくと「医薬品・バイオテクノロジー」企業の製品の違いのイメージが持てて、少し理解しやすくなるかと思います。
「低分子医薬品」と「バイオ医薬品」とは?
まずは一般的な「(低分子)医薬品」と「バイオ医薬品」の違いについてです。
医薬品の大部分は、化学合成によって製造された「低分子医薬品」です。
低分子医薬品は多くが分子量500以下ですが、バイオ医薬品の中の抗体医薬品は分子量が15万にもなり、非常に大きく複雑な構造を持ちます。
詳しくは、日本バイオテクノファーマの説明が分かりやすかったので、ご興味ある方はリンク先をご覧ください。
バイオ医薬品は、「遺伝子組換え技術」「細胞培養技術」等のバイオテクノロジーを応用して作られた医薬品のことです。
化学合成で作られる従来の「低分子医薬品」と比較して、バイオ医薬品の製法の確立には高い技術が必要になります。
「低分子医薬品」と「バイオ医薬品」の後発品
新薬の特許が切れてから他社で発売される同一成分(または同等性/同質性)の医薬品を後発薬といいます。
「低分子医薬品」の後発薬「ジェネリック医薬品」とバイオ医薬品の後発薬である「バイオ後続品(バイオシミラー)」の2種類があり、いずれも先発品よりも薬価(薬の価格)が安くなります。
ただし、「ジェネリック医薬品」は構造が単純で先発製薬品との同一性を示すことが比較的容易であるのに対して、「バイオシミラー」は分子構造が複雑で、同一性を示すことは困難であり同等性/同質性を示すために多くの試験が必要になります。
この事実から、「バイオ薬品」については特許が切れても「低分子医薬品」と比較して模倣困難性が高いと言えます。
医薬品・バイオテクノロジー銘柄一覧(40銘柄)
ではここから、具体的な「医薬品・バイオテクノロジー銘柄」について触れていきます。
「医薬品・バイオテクノロジー銘柄」の個別銘柄を一覧にしました(40銘柄 )。
全ての銘柄ではありませんが、いくつかの銘柄については個別の解説記事も書いてます。ご興味ある方はティッカーのリンク先をご覧ください。
※時価総額は2022/07/25時点
No | ティッカー | 企業名 | 時価総額($M) |
1 | JNJ | Johnson & Johnson | $453,811 |
2 | LLY | Eli Lilly And Co | $315,025 |
3 | PFE | Pfizer Inc. | $290,476 |
4 | ABBV | AbbVie Inc | $265,455 |
5 | MRK | Merck & Co., Inc. | $228,933 |
6 | NVS | Novartis AG | $198,411 |
7 | BMY | Bristol-Myers Squibb Co | $155,081 |
8 | AMGN | Amgen, Inc. | $132,866 |
9 | GSK | GSK plc | $71,341 |
10 | ZTS | Zoetis Inc | $82,445 |
11 | GILD | Gilead Sciences, Inc. | $76,200 |
12 | VRTX | Vertex Pharmaceuticals Incorporated | $72,553 |
13 | MRNA | Moderna Inc | $65,905 |
14 | REGN | Regeneron Pharmaceuticals Inc | $64,510 |
15 | BNTX | BioNTech SE – ADR | $39,459 |
16 | SGEN | Seagen Inc | $31,816 |
17 | BIIB | Biogen Inc | $30,399 |
18 | RPRX | Royalty Pharma plc | $26,084 |
19 | WST | West Pharmaceutical Services Inc. | $23,223 |
20 | CTLT | Catalent Inc | $19,341 |
21 | HZNP | Horizon Therapeutics PLC | $18,892 |
22 | INCY | Incyte Corporation | $17,858 |
23 | BMRN | Biomarin Pharmaceutical Inc | $15,789 |
24 | UTHR | United Therapeutics Corporation | $10,327 |
25 | JAZZ | Jazz Pharmaceuticals PLC | $9,845 |
26 | OGN | Organon & Co | $8,319 |
27 | HALO | Halozyme Therapeutics, Inc. | $6,962 |
28 | CRSP | Crispr Therapeutics AG | $5,925 |
29 | VIR | Vir Biotechnology Inc | $3,887 |
30 | ABCL | AbCellera Biologics Inc | $2,874 |
31 | DVAX | Dynavax Technologies Corporation | $1,873 |
32 | IRWD | Ironwood Pharmaceuticals, Inc. | $1,828 |
33 | EBS | Emergent Biosolutions Inc | $1,669 |
34 | PRTA | Prothena Corporation PLC | $1,445 |
35 | RGNX | Regenxbio Inc | $1,346 |
36 | SIGA | SIGA Technologies, Inc. | $1,136 |
37 | QURE | Uniqure NV | $1,120 |
38 | INVA | Innoviva Inc | $1,015 |
39 | ACLX | Arcellx Inc | $938 |
40 | ITOS | iTeos Therapeutics Inc | $887 |
※時価総額は2022/07/25時点
ヘルスケア/バイオテクノロジーETF
個人的には、銘柄の分析を行なって優良な個別銘柄に投資したいという考えですが、銘柄分析や管理が面倒という方も多いと思います。
「個別銘柄ではなくてETFを買いたい」という方に向けて、参考のため、ヘルスケアセクター、バイオテクノロジーのETFについても触れておきます。
ヘルスケアセクターETF「VHT」
ヘルスケアセクターのETFとしては「Vanguard Health Care ETF(VHT)」があります。
構成銘柄、チャート、経費率(2022/07/27時点)は以下のとおりです。
全体のうち、医薬品銘柄が28.9%、バイオテクノロジー銘柄が17.6%を占めています。
主な構成銘柄には、UNH、JNJ、PFE、ABBV、LLYなどが含まれています。
経費率は0.10%となっています。
VHTのリアルタイムチャート
バイオテクノロジーETF「XBI」
バイオテクノロジーのETFとしては「SPDR® S&P® Biotech ETF(XBI)」があります。
構成銘柄、チャート、経費率(2022/07/27時点)は以下のとおりです。
経費率は0.35%となっています。
XBIのリアルタイムチャート
バイオテクノロジーETF「IBB」
バイオテクノロジーのETFとしては「iシェアーズ バイオテクノロジー ETF」があります。
構成銘柄、チャート、経費率(2022/07/27時点)は以下のとおりです。
経費率は0.45%となっています。
IBBのリアルタイムチャート
株価が高値圏にある銘柄
株価が高値圏にある銘柄を3つ紹介します。
イーライリリー(LLY)
イーライリリー(LLY)の業績・財務状況・配当等については、下(⬇︎)の記事で詳しく解説してますので、ぜひご覧ください。
LLYの株価チャート(2022/07/27時点
アムジェン(AMGN)
アムジェン(AMGN)の業績・財務状況・配当等については、下(⬇︎)の記事で詳しく解説してますので、ぜひご覧ください。
AMGNの株価チャート(2022/07/27時点)
TradingView提供のAMGNチャート
バーテックス(VRTX)
バーテックス(VRTX)の業績・財務状況・配当等については、下(⬇︎)の記事で詳しく解説してますので、ぜひご覧ください。
VRTXの株価チャート(2022/07/27時点)
TradingView提供のVRTXチャート
高配当銘柄
続いて高配当の銘柄を紹介します。
40銘柄のうち12銘柄を配当利回りの高い順に並べた表は以下のとおりです(※配当利回りは2022/07/27時点)。
※GSKは先日スピンオフがあったため除いています。
ティッカー | 企業名 | 配当利回り(%) |
GILD | Gilead Sciences, Inc. | 4.79% |
NVS | Novartis AG | 3.83% |
ABBV | AbbVie Inc | 3.73% |
OGN | Organon & Co | 3.43% |
PFE | Pfizer Inc. | 3.08% |
AMGN | Amgen, Inc. | 3.08% |
MRK | Merck & Co., Inc. | 3.03% |
BMY | Bristol-Myers Squibb Co | 2.89% |
JNJ | Johnson & Johnson | 2.61% |
RPRX | Royalty Pharma plc | 1.74% |
BNTX | BioNTech SE – ADR | 1.35% |
LLY | Eli Lilly And Co | 1.19% |
ギリアド(GILD)
業績・財務状況・配当・株価チャート等については、下の記事をご覧ください。
ノバルティス(NVS)
業績・財務状況・配当・株価チャート等については、下の記事をご覧ください。
アッヴィ(ABBV)
業績・財務状況・配当・株価チャート等については、下の記事をご覧ください。
バフェット銘柄
世界的に有名な投資家のウォーレンバフェット氏のバークシャーハザウェイのポートフォリオに組み込まれている銘柄もあります。
2022年3月末時点のバークシャー社のポートフォリオの一部を抜粋した表は以下のとおりで、JNJ, PG, RPRXが含まれています。
ロイヤリティファーマ(RPRX)
業績・財務状況・配当・株価チャート等については、下の記事をご覧ください。
じっちゃま言及銘柄(6+1銘柄)
TwitterやYoutubeでも注目を集めた投資家の広瀬隆雄さん(通称:じっちゃま)が下記の記事で、バイオテクノジーセクターと個別銘柄(AMGN, REGN, INCY, BMRN, UTHR, IRWD)について言及されています。
またTwitterで アーセルクス(ACLX)についても言及されており、その直後に株価は急騰しました。
広瀬隆雄さんは現在、発信の場をCh-OMUSUBI(おむすびチャンネル)に移されています。
おむすびチャンネルは投資以外についても、「学び」や「コミュニケーション」のプラットフォームとして面白いのでご興味ある方はリンク先をご覧ください。
「サル痘」で急騰中の銘柄
最近、世界的に「サル痘」の感染が拡大しており、先日WHOが緊急事態宣言を出しました。
「サル痘」のニュースに伴い、シガ・テクノロジーズなどの関連銘柄が急騰しました。詳細は下記記事をご覧ください。
個人的に気になった銘柄
注目されたり、株価に勢いがあったりする訳でもないのですが、収益性が非常に高いので、個人的にはイノビバ(INVA)が気になりました。ご興味ある方はぜひ下記記事をご覧ください。
まとめ
最後にまとめです。
・現在、インフレが高止まりしており、今後、米国ではさらに急激に利上げが進む可能性がある。
・逆イールドが複数回発生しており、景気後退のリスクが高まっている。
・過去の景気後退期の株価推移を見ると、ヘルスケア銘柄も一時的に下落しているが、S&P500指数をアウトパフォームしていた。
・過去の景気後退期かつ高インフレの時期には、医薬品・バイオテクノロジー銘柄のEPS推移を見ると、S&P500指数や他のヘルスケア銘柄を上回っていた
・景気後退期で、インフレの悪影響を受けにくい銘柄として医薬品・バイオテクノロジー銘柄に注目。
・株価が大きく下落したタイミングで、特に安定してキャッシュフローを生んでいる銘柄へ投資検討をする。
・本記事では株価が高値圏にある銘柄、高配当銘柄、著名投資家の保有・言及銘柄などを紹介した。
(投資は全て自己責任です。ご自身の判断と責任でお願いします。)
この記事は、仕事と育児(0歳)・家事の合間に、時間を捻出して書いています。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。